Scene.1 清志郎さんがやって来た!ヤァヤァヤァ♪
高円寺文庫センター物語①
「よし、クロ! 正面のシャッターを半開きにして第一グループを入れてくれ。他のグループのリーダーに始めるからって言ってさ、前のポイントに詰めるよう伝えて!」
「はい、店長! 行きます」
「りえ蔵、さわっちょ、清志郎さんのサポート頼むよ!」
「じゃ、清志郎さん! よろしくお願いします。」
シャッターが開いて、最初の50人が整然と店内に入ってきた。
嬉しいなぁ、有難いことにお客さんは整然と落ち着いて入ってきてくれている!
「みなさぁん、大変お待たせ致しました。これから清志郎さんの握手会を開催いたします! ではどうぞ、一番目の方からお進みください」
笑顔の清志郎さん、満面の笑みで応えるお客さん。握手を交わしサイン本が渡されていく。スムーズだ! 支障なく進行していくじゃないか。
子供連れのお母さんとの会話が弾んでる、あれ? 清志郎さんがギターを抱えた!
サプライズだ、ミニ・コンサートが始まっちゃったよ! その親子はもちろん、50人の第一グループの皆さんがノリノリ手拍子で笑顔だ。
清志郎さんのマネージャーも編集の石原さんも嫌な顔はしていない。OK、ここはこのノリで盛り上がれるぜい!
素晴らしい、こんな小さな空間でもみんな笑顔で楽しんでくれている。
次のグループがお待ちですのでとアッピールすると50人が整然と退出してくれるなんて。やっぱり、清志郎さんのファンは違う!
「店長、ちょっと休憩にしようか」清志郎さんのひと言で我に返った。
「店長、タバコいいかな?」
本屋の店内は禁煙だけど、清志郎さんだよぉ~灰皿、灰皿!
間近に見るスターは、あまりにボクらの空気に馴染んでいて呑みに誘いたいくらいだった。
気がつけばRCサクセションの「トランジスタ・ラジオ」の歌詞を、清志郎さんと突っ込んで話していた。リバプールサウンドは同年代、というかボクは、清志郎さんと同い年なんだよ。
二人の時は終わったのね♪
テレビや新聞のインタヴューは、ここからOKにしてあったのだった。
テレビ局が、「昼間は大手書店でサイン会があったそうですが、夜はなぜこんな小さな本屋なんですか?」
ニヤリとした清志郎さん「店長とはね、リバプール一中の同級生だからさ」
当意即妙、大感激! ついさっきの会話を盛り込んでくれるなんて!
同い年でも、数多の修羅場を潜り抜けてきたであろうスターは違う。
250名の握手会を終えると、多くのファンに見守られて去っていったロック・スター!
去り際も、なんの混乱もなく改めて清志郎さんのファンの成熟度に感心した。
いまだ耳朶に残っている「店長、またやろうよ」の声。
清志郎さん、なにが気に入ったんだろう? 文庫センターを「日本一ロックな本屋」と激賞してくれた上に、オフィシャルショップに認定してくれた。
ご近所に一切ご迷惑をかけることなく去っていった250名のお客さん。
ちっとも清志郎さんを見られないのに、周辺の整理にあたってくれた仲間たち!
心から、ありがとぉ~愛してます!
清志郎さんが去った後の記憶がない。
こうして、高円寺文庫センターは一夜にして伝説になった。
小さな小さな本屋は、一夜にして伝説を創った。
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